青い海と空のみちのく八戸から 波動はるかに 第8回 最も小さきこと

 さて、今回は自作の句の手前味噌ではなくして、大学の仲間のことに触れたいと思う。大学の入学資格は市在住の60歳以上ということなので、当然ながら、最も若い人でも60歳ということになる。時代が変わって現在入学者の平均年齢は70を超えていて、グループ分けされた私たちの班仲間11人の平均年齢73~74歳であろう。うち8名が女性で、まるで本物の女学生(失礼)になったかのように、ちょっとだけ低い黄色い声を張り上げてのお喋りや挙動が、皆ほんとに若々しい。単に受け身の講義を教室で聞くだけではなく、郊外学習、運動会、美術展、芸能祭の実践学習もあり、その上、登校日以外のクラブ活動もあり高齢の身にはかなりハードなメニューと思われる。(クラブ活動は月3回のクラブもあり、それを掛け持ちしている強者もいる)。しかし、皆さん全くやらせられ感なく目を輝かせ、自発的に行動しているのだ。

 「老人力」といったのは美術家兼作家の赤瀬川原平氏と記憶する。老域に入り年齢を重ねてゆくことは、確実に何かを失ってゆくことに他ならないが、その分、残っているものが際立ってゆくことでもある。頑固者になったりするのも、つまりその個人の持ち味、個性が尖ってくることであろう。それは、あらゆることに可能性がありながら、それでいて、それ故なのか才能の展開が難しい“若さ”と異なって、それぞれの人生体験、様々な学習、訓練などで身についたものの中の一部が顕在化し、明瞭な輪郭を見せてくる現象とだと思われる。大学の仲間も各々相当個性的な振る舞いを通して個を主張している。私たちは皆一人ずつ、異なる時代、地域、家庭などの環境の中にいて、ほかの誰でもない各々独自の人生を歩んでいる。その一瞬一瞬の体験には、その分だけの喜怒哀楽といった私たち心の体験も伴ってきている。回数、深度も異なるがその都度都度心も応じて、私たちは出来上がってきたのだと思う。

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